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パフォーマンスドラマ
「トリッピング・ミスターじじい」~僕の家は戦場になった~

ワタルはじいい(袴田大吉)と2人で暮らしている。
幼い頃両親(じじいの長男夫婦)を亡くし、じじいに引き取られたのだった。
ところがある日、ほとんど絶縁状態だった次男夫婦(アツシ・恵美)が突然、じじいの退職金目当てに借金をしに来た。
が、あまりの身勝手さに激高したじじいは「二度と来るな」と追い返し、その直後、卒倒してしまう。
そしてそのまま痴呆症に、俗に言う、ボケ老人である。
必然的に中学一年生のワタルが一人で面倒をみなくてはならない。
ボケ症状は日増しに悪化し、悲惨な日々が続く。その上、アツシ夫婦はじじいの財産に目を付け土地の関係書類と実印を盗み出す始末。そして、土地、屋敷を売り渡し、すっかり億万長者気分で贅沢三昧。
ところが不動産屋と政治家とによる巧妙な土地ころがしの餌食となり、結局、契約時の半額以下で土地と屋敷を手放すことになってしまった。
そうなると哀れなのはホームレス状態のワタルとじじい。
ワタルは一大決心をして悪徳不動産屋に忍び込み、土地登記書類を取り戻そうとするが、所詮13歳の少年。容赦なく叩きのめされてしまう。絶体絶命のその時、一発の銃声が・・・じじいが助けに来たのだ。
現在と過去と未来を自由に行き来するじじいの頭の中は、今まさに第二次世界大戦の真っ直中にあるらしい。
いつしか外は機動隊とマスコミ関係者が大勢取り巻き、ヘリコプターが飛び交い、TV各局の臨時番組で、前代未聞の『老人と少年による不動産屋籠城事件』は全国的な規模に発展していった。
現場に急行するアツシ夫婦!裏工作に走る政治家!そしてついに、不動産屋に籠城し続けるワタルとじじいに業を煮やした狙撃隊が、一斉に銃口を向けた!!

みどころ

トリッピング・ミスターじじい

このお芝居は、「パフォーマンスドラマ」という、知念正文の新しい芝居のスタイルが用いられています。
「パフォーマンスドラマ」とは、セリフによる表現にだけにとらわれず、直接的、視覚的に観客に訴えかける表現法を言います。
忙しく動き、疲れている現代人、街の通りや満員電車の中の様子などをハイスピードで駆け回りながらダンスで表現し、ボケ老人の目から見える現代人の生活ぶりをパフォーマンス・ダンスで表現して展開していきます。
白く塗られた鉄パイプで組み立てたオブジェを舞台装置とし、それが回転することにより、じじいの家・不動産屋・アスレチックジムなどに変化していきます。
圧倒的なスピード感で、最後の感動のラストシーンまで観客を飽きさせない魅力が、「パフォーマンスドラマ」には秘められています。

上演にあたって

トリッピング・ミスターじじい

数年前、京都にいる義理の父がボケました。脳で倒れて入院したのですが、病院を抜け出し行方不明になってしまい、三日後、奈良のある町でびしょぬれで立っていたのです。
専門の病院に入れたのですが、僕たちが見舞いに行くたびに憔悴していくのでした。
見ていますと看護婦さんが実に手際よく面倒を見てくれていました。
しかしそれは、なるべくベッドから離れないように縛り付けようとしているようにも見えたのです。
日ごとに義理の父は生きる望みを失っていくようでした。このままではまずい!と、すぐに東京に連れてきました。それ以来、僕の家は戦場になりました。根が明るい義父は毎日笑わせてくれています。人生を教えてくれています。
でも大変です。この作品をご覧になって、少しでも老人問題や土地問題に目を向けて頂ければ幸いです。
劇団鳥獣戯画 知念正文

客席からの声

とても面白かった。老人問題と少年の生き方の変化が感動的でした。途中からどんどん惹きつけられて、舞台構成もすごく良かったし、笑いの中にも真に迫ったものがあってすごいの一言でした。
生の舞台でしか味わえないエネルギッシュな動きでテンポも良く、あっという間の1時間30分でした。どんどん展開していく中でテーマも重いものを持っていますが、笑いもあり、観客に押し付けるのではなく、でも伝えることはきちんと伝える、内容の濃い作品でした。
すてきな作品でした。老人問題は色々考えさせられることが多いですが、ワタルが最後に言った「いままで頑張ってきたんだから、ゆっくりしていいよ。」のセリフに感動しました。老人にだけでなく、周りの人に言えるような人間になりたいと思った。
今の日本の問題について考えさせられた。みんな演技もダンスもうまくて惹きつけられました。じじいのボケぶりが最高でした。
内容的にもパフォーマンス的にもいろいろな要素があって素晴らしかった。ボケ老人に対して前向きで、笑ったり泣いたりで感動しました。
上演時間 約90分(休憩なし)
人数 出演者 12名
スタッフ 5~6名(会場条件により変更)
会場条件 ホール
舞台準備 約4時間
舞台撤去 1時間半~2時間

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